それでも愛がたりなくて

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数日後、医師から検査結果が告げられた。 非閉塞性無精子症というもので、成人してから罹ったおたふく風邪からのムンプス精巣炎が原因ではないか、ということだった。 「子供はできないということですか?」   賢治が医師に尋ねた。 「自然妊娠は見込めません。他にも方法はありますが、成功率がそれほど高くないことと、リスクも伴います。ご夫婦でじっくり検討してみてください」 「そうですか。わかりました」 賢治は落ち着いて受け答えしていたが、表情は明らかに雲っていた。 帰りの車内は重苦しい空気が漂っていた。 「塔子、ごめんな」 「え? やだっ、謝るとかやめてよ」 「いや、実は思い当たる節があったんだ。塔子から話を聞いた時、原因は多分俺にあるだろうなって思ったんだ」 「そうなの?」 「うん。おたふく風邪になった時、実は医者からそんな話も聞いてたんだ。でも全員がそうなるわけじゃないって言ってたし、俺もまだ若かったからそこまで重く考えてなくて……」 「うん、まあそうだよね」 「でも、結果お前のこと騙したみたいになって……ごめん」 「騙したって――結婚詐欺みたいな? そんなこと思うわけないじゃん。大袈裟だよ」 塔子は小さく笑ったが、賢治の表情は硬かった。 「お前、いつかは子供が出来たらいいなって言ってただろ? 勿論俺もそう思ってたし」 「それはそうだけど、もし結婚する前にそれがわかってたとしても、私賢治と結婚してたもん」   それは、塔子の本心だった。 検査を受けに行く前に、賢治とはよく話し合っていた。結果がどうであったとしても、自分達らしく今まで通りの生活を続けていこう、と。 勿論子供のいる生活を想像したことはあったが、賢治と二人だけの生活を考えた時もまた幸せだろうと思えたのだ。 しかし、その頃からだろうか。 少しずつ歯車が狂い始めたのは――
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