それでも愛がたりなくて

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鈴木からは、月に数回食事の誘いがあった。家に帰って一人の夕食は味気無いので、大抵塔子は誘いに乗った。食事だけの時もあれば、そうでない時もあった。 帰宅が深夜になることもあったが、やはり賢治はそのことには一切触れなかった。 それは、単に賢治が干渉しない性格だからなのか、それとも自分に対して何の感情も湧かないからなのか、などと考えるが、何故かそんな日は必ず賢治に抱かれた。 優しく丁寧に、また全てをリセットするように。 その度に塔子は罪悪感に苛まれた。 賢治はまだ自分を愛しているのだろうか――期待と不安と困惑が入り交じる。 もう数ヶ月そんな状態が続いていた。 仕事を終えて塔子が帰宅すると部屋は真っ暗だったが、もう慣れっこになっていた。 一人で夕食を済ませ、その後ハーブティーを淹れソファーに体を沈めた。 このところ、賢治の帰りはほぼ毎日深夜だった。そして、塔子の不眠も続いていた。 いつからか、塔子の不満は不安に変わっていき、自分に鈴木という存在があるにもかかわらず、賢治の浮気を疑うようになっていた。 日々の残業と冷淡な態度に加え、休日に一人で出かけていくことが増えたのだ。 賢治の気持ちは、恐らくもう自分には向いていないだろうと、塔子は感じていた。 自分達夫婦の行き着く先は何処だろう。 塔子の頭に“離婚”の文字が浮かんだ。   最近賢治と出かけたのはいつだっただろう、と考え、二週間前の日曜日だったことを思い出した。ホームセンターへ生活用品を買いに賢治と車で出かけた。 一緒に外食したのは――クリスマスイブだった。普段は行かないようなお洒落な店を予約して、食事と雰囲気を楽しんだ後、お互い気分が高揚しそのまま近くのホテルで熱い夜を過ごした。もう五ヶ月も前の出来事だ。 もうあの頃のようには戻れないのだろうか。 塔子の頬を涙が伝った。   このところそんなことばかり考えている自分は、やはり賢治のことを愛している、と認めざるを得なかった。 悩んだ挙げ句、塔子は探偵事務所に賢治の素行調査依頼をすることにした。 最悪の結果も想像したが、このままの状態が続くよりはましだと考えてのことだった。
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