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一体、俺の人生はどこから間違っていたんだろう。
今朝から運勢が大殺界に転げ落ちたとか? 実は前世、大極悪人だったとか?
とにかくこんな羽目に陥っている原因が何かあると思わなきゃ、自分が陥っているこの状況の説明がつかないじゃん……。
あの後連れてこられたのは繁華街の裏手にあるこの店の一室。
ホストクラブとか風俗店が立ち並ぶこの一角に、もちろん足を踏み入れたこともない俺は雰囲気にのまれてしまって、すっかり思考停止状態だ。
薄暗い部屋の中には数名の女の子たちがいる。
多分俺より年上だと思うけど……。
お互いに顔を合わせないようにしているのが不自然だ……いや、むしろこの場所では当然のことなのか。
壁に張り付くように置かれたハンガーラックに近づいてみる。
かかっている服を手に取って引いてしまった。
だって、全部どこかしらスケスケなんだ。胸の部分だったりそれより下の方……。
看護師の制服っぽいのも妖精っぽいファンシーなふりふりミニドレスも、ぜーんぶいわゆる人に見せちゃいけない部分が丸見えになる仕様になっている。
思わず俺は、手にした衣装と周りにいる女の子たちを交互に見た。
(これ、着るのかよ)
と、ドアが開いてふらりと女が一人部屋に入ってきた。
女は俺のことをチラッと見て、
「新入り?」
と少し離れてたつ黒スーツとスキニー女に聞いた。
黒スーツは顔にニヤニヤ笑いを張り付かせたまま両肩をすくめて見せた。
「ちょっと思い知らせてやろうってだけ。好評なら定番に組み込んでもいーんだけど、俺的にはね。でもシュウさん、ガキ嫌いだから」
「へーえ、小葉の制服。価値あるよ。学生証は?」
俺の制服の襟元を突いた女が顔を近づけてくる。
顔が近い。つぅか、口がまじタバコ臭え。
(オェ)
顔を背けると、その先にいた子と目が合った。
肩にかかる髪の内側だけピンクに染めてる子だ。
なぜか俺を見てすっげぇ目を見開いてる。目ん玉が落ちそうなくらい。
ん?
(誰だっけ)
俺が心の中で首を傾げている間も、黒スーツ野郎と女との会話は続いていた。
「良いわ、すごくイイ。需要ありあり。単発じゃなくてレギュラーで欲しいわ」
ギャー!! なんの需要だよっ。
「実績ないのにすげー好感触。アハ、君ここで何をさせられるか知ってる? 知らないよね」
「……」
「ストリップだよん」
「……」
「イイなぁ稼げて。ここでは見せるだけだけど、いろんなオプションのっければたっくさん金儲けできるからね」
黒スーツが俺に向かってニコニコと笑いかけてくる。
「カ・ラ・ダ、一つで」
ーーぞくッ。
「最近の子は経験早いって聞くけど。処女のふりしてね。その方がお客さまが喜ぶから」
「嫌だったら今ゲロっちゃいな。アレのありかを話すならここから引き上げてあげる。本当に殺ってて行き場がないんなら、このままズブズブ沈むのもありかもね。じゃ、ガンバロー」
ヘラヘラ笑いの黒スーツが俺の胸に衣装の一つを押し付けてくる。これが服買って暗い布の量が少なくてなんかヒラヒラの。オーガンジーでペラッペラなやつを。
「こんなの着れない」
はたき落とすと、黒スーツが笑みを引っ込めた。いきなり壁に押し付けられて後頭部を強か打ち付けられる。ゴンっという音とともに、目から火花が散った。
「……ぁがっ」
肘で喉を押さえつけられた。
息ができない。壁に縫い止められた虫みたいに身を捩る俺を黒スーツは冷たく見下ろした。
「はーやく、脱げよぉッ」
黒スーツが一歩下がったので壁との間に隙間が生まれて、俺はゲホっと咳き込み崩れ落ちた。
だがすぐに腕をつかまれ無理やり立たされる。頬に張り手が飛んできた。
女が「ちょっと、ショー前に傷つけないでよ」と言うのと、周りにいる女の子たちが怯えて固まる気配を感じた。俺は立て続けの暴力に抵抗できない。
着ていたブレザーを剥ぎ取られる。
男の手がシャツの首元にかかる。
ぶちぶちとボタンが弾け飛び、下につけていたブラを押し下げられる。
「……ッ」
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