1 境界線上の俺

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「……お前以外、頼むかよ」  言ってしまってから(げ?!)と自分で自分の発言に目を白黒させたよ。  後悔先に立たず……いや、覆水盆に返らず、か。  出してしまったコトバは口の中には戻せない。  果たして……、ちょっと体を離して見上げてみれば、ニヤリ、と口角を上げるコイツ。  テンパった俺は余計なことを聞いた。 「ね、俺の……飲んだよな」 「あ? あぁ」 「その……どんな感じなの」 「量が多くて、濃ゆかった」  ぺろりと口の端を舐めながらサラッとに答えてくる高藤。  俺が知りたいのは、量とかそういうんじゃないんだけどな……。 「美味い?」 「何? 自分の味を知りたいの?」 と聞かれて頷けば、べ、と目の前に分厚い舌ベロ差し出され。  他の生徒は入学式に真面目に参加しているって言うのに、俺は同じ学校の敷地内で、センセイとイケナイことしちゃってる、っていうシュチュエーションに多分頭がイカれていたんだと思う。  誘われるように俺も口を開け、伸ばした舌先でこいつのそれをちょんと(つつ)いた。 (?)  当たり前だけど、突いただけじゃ味なんかわからなくてさ。  相手の舌先が動かないのに安心して、(もうちょっと)って舌を押し付けようとしたら、急に高藤の顔が迫ってきた。俺の舌を吸い込みながら深いキスを仕掛けてきたんだ!  慌てて、スーツの胸を突き放して俺は背中からベッドに倒れ込んだから、キスは未遂で終わったけれど……。  口の中に、なんとも言えない苦みが広がった。 「……オェ。まっず」  顔を顰めた俺の上から、 「初めてづくしで楽しいな。一条」 って、やけにご機嫌な高藤の声が降ってきたものだ……。  それが、俺とコイツがこういう関係になったはじまり。 イク気持ちよさを味わい、教えてもらった初めての日、だったってわけ……。  ふぅ。  まぁ、とにかく。    コイツのの甲斐あって俺の分身もすっかり落ち着いて、入学式も途中からだったけど無事出席できた。  高藤も誰にも言わないで秘密にしてくれるって約束してくれたからさー。 (そりゃそうだろう。バレれば淫行教師だ)  俺はこの一回で、全て解決したと思ってたんだ。  こんなこと、これきり……って思うだろ、普通。  でも、その後もちょくちょくその症状(ありのままに言っちゃうと勃起)は起きてしまい……。 考えてみてよ。ほとんど女だらけの学校の中で女装した男がスカートの前にテント張ってるって状況……。  ヤバい奴だろ。  見つかったら俺、マジ〈変態〉確定じゃん!  女装がバレる以前の問題だ。ヒトとしてダメ。マジでマズい!  だから、仕方なしに。  全くの不本意だけど! こうして定期的に、高藤(コイツ)にやんちゃな俺の分身をなだめてもらってるってわけ……。
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