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「詳子、時間よ」
母親の呼ぶ声が、私と詳子との時間と思い出を連れ去っていく。
まだ、話したいことがあるのに。伝えたいことだってあるのに。何もできない自分が歯痒くてたまらない。
無情にも時間だけが、足早に過ぎようと苛立っている気がした。
「ここで何してるの?」
さっきまで車で待機していた母親が、詳子を迎えに私たちの間を割って入ってくる。
「ミキと話してたの。もう会えなくなるしね」
「あきれた。相変わらずね。詳子はいつまで経っても子どもなのね。もう、この子からは卒業したのかと思ってたわ」
「やあねぇ。寂しがり屋の私に、妹だって教えてくれたの、お母さんじゃない」
「あら、そうだったかしら。そんなこともう、忘れたわ」
いつもそうだった。詳子だけが私に寄り添い、唯一の存在として迎え入れてくれていた。
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