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けど不思議と、嫌な気分にはならなかった。
むしろ、「いつも通りの日常」が帰ってきた気がして、もとみは自然と笑みを浮かべる。
「そう、それでいいのよもとみは」
「……え?」
「笑いなさい、どんな事が起きても。そして嫌なことがあったら私を頼りなさい。私はあなたの姉で、たった一人の家族なんだから。ケンカくらい何よ、そんなの仲のいい姉妹だったら、して当然でしょう?」
「……そうかな」
「そうよ」
「……、そっか」
寧々はもとみから目を外すと、そのまま上へ──夜空を見上げる。もとみも続いて夜空を見上げ、二人して暫くの間、夏空の星を眺めた。
見上げた先にある二つの星が、まるで寄り添うように光り輝いていた。
その星の輝きを眺めながら、もとみはずっと言えなかった誘いの言葉を告げた。
「……ねぇお姉ちゃん。次の夏祭りは、
一緒に行こ?」
「ええ、もちろんよ」
答えはすぐだった。
驚くほどにあっさりと返事を貰ったもとみは、しばらくの間放心するが、これまでの悩みや自身への怒りがバカらしく思えて、抱えていたものを放り捨てる勢いで笑った。
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