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仮にまだ何か言いたいのであれば、それはその時に言えばいい。
今はこうして、大好きな姉との時間を大切に過ごしたい。
そんな彼女の願いを叶えるように、もとみが見上げていた夜空に大きな花火が打ち上がった。
「──綺麗だね」
「……そうね」
もとみの呟きに、寧々が頷く。
「……あんな事が起きた後でも花火って平気で上がるのね。運営体制どうなってんのかしら」
「いや気にするとこそこなの!? っていうかあんな事って、それ起こしたのお姉ちゃんだよね!?」
「起こしたなんて人聞の悪い!! 勝手に起きたのよ、私は悪くない!! 悪いのは私以外の誰かよ!!」
「名指しで罪を擦りつけるな……!!」
少しだけロマンチックなセリフを期待していたもとみだったが、返ってきたのは寧々らしい、斜め上を行き過ぎた突飛な発言だった。
……まぁ。これもいつもの事か、と。
寧々とのやり取りの中で、自身が日常に戻ってきた感覚を実感し、もとみは自然と笑みを浮かべた。
「……お姉ちゃん。今度は二人でちゃんと行こうね。そして二人でまた、花火見ようね」
「約束だよっ!」
そう言って満面の笑顔を浮かべたもとみを直視した寧々は、そのあまりの尊さから再び全身から血を吹き出して倒れる事になるのだが……。
その後の顛末を知る者は、もとみ以外に、
いない──
姉妹残処編 完。
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