『僕』

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「カナダです」 「え?」 「ウィンディーズは、カナダです……」 「あ、カナダ……」  もう烏龍茶を口にして場を繋ぐしかない。なぜ、こちらが気を使わねばならんのだ。 「カナダ! カナダだね! 皆間違えちゃだめだよー? アハハハ!」  ダメだ。何を話しても無駄なようだ。 「じゃあ他には?」 「他?」 「趣味」  ここにまだ勝算があるというのか。そのメンタルだけは尊敬できるかもしれない。 「いやもう他には……」 「えー、うそ、何かあるでしょ? ねえ、何か趣味ないの?」  不運にも、先輩は自分をロックオンしてしまったようである。このやり取りを完結させないことには解放してくれないのであろう。 「あーじゃあ、はい、わかりました。趣味ですね……映画です」 「え?」 「映画」    ウィンディーズであの感じな以上、こうなったらとことんマニアックな話で引かせるしかない。
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