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わたしと違って。ううん。比べるのもおこがましいくらいのパーフェクトお姉ちゃんだ。そんな自慢のお姉ちゃんの魅力に抗って、甘えないなんて出来るはずがない。
「よくわからないんだけど」
「とにかく、お姉ちゃんが悪いんだよ」
でも、恥ずかしいから面と向かっては言わない。
そんなパーフェクトお姉ちゃんが、男子にモテないはずがない。
今日だって……。
「ああ、そういえば」
わたしは、後回しにしていたことを、いま思い出したかのように言った。出来ることなら忘れたふりをしていたかったけど、相手がいるのでそうもいかない。
鞄の中から、白くて可愛らしい便箋を取り出し、お姉ちゃんに渡す。
「なにこれ?」
「わかってるくせに。いつもの。お姉ちゃんにって、知らない男子から渡されたんだよ」
「ああ」
合点がいったように、お姉ちゃんは頷いた。渡してきた男子のモジモジと恥ずかしそうな様子から、内容は見なくとも分かる。
ラブレターだ。告白の方法に今更ラブレターを選ぶなんて、古風だな、とわたしは思う。
お姉ちゃんは、わたしと違って男子にモテる。こうやってラブレターを貰うのだって、今回が初めてではない。もう何通も、いろんな男子から貰っているのを知っている。しかし、男子たちはお姉ちゃんを高嶺の花だと敬遠しているのか、何故か妹のわたし経由で間接的に愛の告白をするのだ。
その度にわたしは、直接告白する勇気もないのに、付き合ってもらえると信じているんだろうか、と疑問に思う。
「どうするの?」
わたしはおずおずと尋ねる。答えは予想できているが。
「んー。この子には悪いけど、断るよ」
お姉ちゃんはラブレターの内容も見ずに答えた。やっぱり、と予想は的中しつつも、わたしは胸を撫で下ろす。
「どうして?」
これまた答えは予想できているが、わたしはにやにやとしながら尋ねる。
「だって、私にはイオがいるからっ」
言い終わるのが早いか、お姉ちゃんはわたしにじゃれついてきた。ベッドの上で二人、おかしくて笑い合いながら、絡まり合って転げ回る。キャッキャと子供みたいに。
やっぱり、お姉ちゃんはどこにも行かない。ずっと、ずっと、わたしと一緒だ。
「イオー。そろそろ夕ご飯よー。降りてきなさーい」
階下からお母さんの呼ぶ声が聞こえて、わたしたちはピタリと止まった。それがまたおかしくて、クスクスと笑い合ってから「はーい」と返事をする。少し、息が乱れていた。
ベッドから立ち上がり、制服を着替える。
「ご飯だって。お姉ちゃん」
「うん。先に行ってて」
お姉ちゃんを残して、わたしは部屋を後にした。
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