0人が本棚に入れています
本棚に追加
なんとなく、おすすめに出てきたバイオリン奏者を見て
思わず体を起こした。
なんて、自分とそっくりなんだろうか。
興味を掻き立てられた旺羽は自分のクラシックギターの演奏を
動画にアップした。
そして、バイオリン奏者に自分の動画を見てほしいとコメントを入れてみた。
2人の出会いはそんな感じだった。
「旺羽、これ」
そう言うとフォークにピクルスを刺して旺羽の皿に移してきた。
「白玖は、マジ好き嫌い多いな」
「ピクルスは好き嫌いのうちに入らない」
「なんでさ」
「好きな人がいないから」
そう言いながら。もう一つ旺羽の皿にピクルスを移した。
「ハンバーガーに挟んだら美味しいのに・・」
そう言いながら旺羽はピクルスをハンバーガーに挟み直して
パクリとかぶりついた。
白玖もピクルスのないハンバーガーを安心して口にした。
2人はよく来る喫茶トレモロに来ていた。
栗毛色の柔らかそうな髪質もそれにリンクした瞳の色も
なめし皮のような肌も長い指も身長の高さや顔の小ささまで
瓜二つの2人だった。
「俺たちどう見ても双子だよな」
「親は違うけど・・」
2人とも自分が養子だという話は聞いた事がなかった。
と、言うことは、2人の両親は自分達は親だと思っている事になる。
2人は何回か会ううちに確かめたい衝動が抑えられなくなってきていた。
「どうする?確かめてみる?」
「養子だったらどうする?」
2人はハンバーガーを頬張りながらスマホを操作していた。
「今からならいけるかな」
「5時までか・・行けるね」
白玖は口元をペーパーで軽く押さえながら役所のホームページを
スクロールしている。
旺羽も向かいからスマホを覗き込んでスクロールの行方を追っていた。
片手に握ったままのスマホで時間を確認すると旺羽が言った。
「行くか」
その言葉を皮切りに2人はテーブルを軽く片付けると席を立った。
最初のコメントを投稿しよう!