『ある姉妹についてのはなし』

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 僕は双子の姉妹と再び顔をつきあわせていた。しかし僕の友人というパイプが失われてしまった今、僕の方から彼女らに対して言うべきことは何もなかった。だから僕は彼女らのどちらかが口を開くのを辛抱強く待っていた。 「こんな事を相談するのは失礼かもしれないんですけど」と姉の方が言った。「実は私たちと付き合った人たちは何日か経つと決まってどこかにいなくなってしまうんです」  僕はそれに対しての返答を慎重に考えてから言った。 「その原因について君たちは何か心当たりがあるの?」 「分からないんです」と妹が言った。「少なくとも最後に彼を見たときは幸せそうでした」 「泥の中にいる豚みたいに?」と僕は言ってみた。  すると双子の姉妹は眉をひそめて咎めるように僕を見てきた。 「不謹慎だったね。謝るよ」僕はついでに天国にいるであろうフランボワーズ・カウベルにも謝った。「それで君たちはこれからどうするんだい?」 「しばらく彼の家に置かして貰って、ある程度のお金が貯まったら自分達の部屋を借りようと思います」 「あなたはどうするんですか?」  妹の方が僕の質問に答えてから、返すように姉が言った。 「彼が死んでしまったからといって僕の生活が何か変わることはないからね。僕はこのままこの町で生き続けるよ」  双子の姉妹との別れ際に妹の方が僕を呼び止めてきた。 「彼が死んでしまって悲しくないんですか?」 「悲しいよ」と僕は言った。「本当に悲しいさ」  それ以降、僕が双子の姉妹を見かけたことはない。彼女たちは次の日にはもうどこか違う場所に行ってしまっていたからだ。
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