姉の幸せ

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 怖くなり急いで帰ろうとしたが動けない。足が地面に縫い付けられたように重い。何とか動く首だけで、辺りを見回せば神社の境内がぼんやりと光っていることに気づいた。  その光はどんどん近づいてきて、私の前でぴたりと止まった。次第に弱くなっていくその中から声が聞こえてくる。 「怖がらなくて大丈夫ですよ」 「あ……」 「急に声をかけて、ごめんなさい。驚きましたよね?」  柔らかな声と共に光の中から現れたのは美しい女の人だった。  黒く長い髪はなぜかふわふわと宙に浮いていて、ほんのり金色に輝いている。意思の強そうな瞳、口許には赤い紅。それでも笑うと花のように美しい。紅い着物には金の糸で桜が刺繍されていて、よくよく見ると彼女自体が宙に浮いている。  幽霊ではなさそうだ、怖さは一切ない。むしろ、神々しさを感じていた。おそらく彼女は 「神様?」 「はい。えっと、言葉通じます?」 「えっ?」 「以前、人の子と話した時に何を言っているのかわからないと怒られて。勉強をしたのですが」 「は、はい。通じます、言葉、わかります!」 「ならよかった」
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