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「葵はどう思う? 今のご時世、生徒と結婚するのがタブーなんて古い考えよね?」
震える声で問いかけてきた姉、そして訴えかけるような潔の目。
「でも生徒と結婚して、お姉ちゃん仕事続けられるの? 色々言われるんじゃないの? 止めた方がいいよ」
味方になってほしいなんていうふたりの気持ちに全く気付かなかった当時の私は深く考えずにそう言った。青ざめるお姉ちゃんの顔と大きくため息をついた潔は「わかった、結婚についてはまた考える」とだけ言って家を後にした。
その後、独り暮らしのアパートに帰ったはずの姉と連絡がとれなくなり、潔もその日の夜から行方不明になった。
「今さら思うんです。あの時簡単に反対しないでふたりの話をよく聞いていたらって。せめて、連絡先だけでも聞けていたらこんなことにならなかったんじゃないかって」
「でも事故なのでしょう?」
「姉は体育の教師をしていたんです。なので泳げないなんてことはなくて……警察は相当疲れていたのだろうって言っていました」
子どもを産んだ友人や同僚のほとんどはたまに預けて休みをとらないと辛いと言っていた。
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