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 ――夜。  ときどき、眠っているさとを抱きしめて眠るようになった。  いつまで、こんな風にして、おれは生きていくんだろう。  これからは、あまりに長くて遠い。だから、さとを抱きしめていなくではならない。  さとは、おれに気づくとおれを抱きしめ返す。  胸に顔を埋めると、何か遠いところに還る気がした。 「母ちゃん……」  やわらかい腕は、おれをじっと撫でていた。
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