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 あの日――ゲロをつまらせた親父を無視して、おれは家を飛び出した。何も知らず、泣いているさとを引っ張って。  死ねと思ったわけじゃない。  でも、もうどうなってもいいと思った。  さとの手をかたく握りながら、おれはうまくいきますようにと願っていた。  その通りうまくいって、嬉しかった。もっとはやくこうしてればよかったと、思った。  でもそうして今、おれになにがあるんだろう。  だから、おれは――
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