俺、アニキから小さな箱を渡される

1/1
前へ
/9ページ
次へ

俺、アニキから小さな箱を渡される

 駆け落ち同然で結婚した両親だから、親しい親戚もなく、お通夜、葬式、初七日をアニキと俺、あーちゃんに先輩、この四人でバタバタと済ませた。  まぁ、ほぼアニキとあーちゃんが走り回ってて俺は何も手をつけることができず、役に立てなくて落ち込み、火葬場で骨を拾う時、俺は先輩に支えながら、震える手でかあさんの骨を拾っていた事にも情けなくて更に落ち込む。  それより、いつものようにふざけているアニキの目元が、腫れていたような気がして、どうせ声をかけても、はぐらかせるだけだってわかってるから、気になっただけで何も聞けずにいた。 ✱✱✱  どんなに辛くても、不安があっても腹は減る。  骨を触った感覚は手を洗っても取れることはなくて、着替えを終えた俺は、部屋から出て、階段の途中で聞こえてきた騒がしい声に頭を抱えた。  声の主はアニキとあーちゃんだ。 「見ろよ、honey! 超かわいい写真集が出てきたんだけど、コレ、貰っていい?」 「一枚でも持って帰ってみろ家ごと燃やしてやるからな」 「What a bummer! honey……中学までの写真で終わってるんだけど! まぁ、ここまででも問題ないか……高校時代は知ってるし」  話をそらすんじゃないの怒声を笑いで流すあーちゃんに、いつもながら偉大さを感じる……  そういえば、俺も中学のアニキとか覚えてないな……まぁ、どうでもいっか、面倒くさいけど止めないとアニキが犯罪者になりそう。  襖から顔をのぞかせると、近くに座っていた先輩と目が合い、腰を下ろと同時に出たため息に、先輩からおっさん呼ばわりされる。 「先輩、居るなら止めてくださいよ」 「マジでか! こんな面白い状況を? 止めるのは勿体なすぎる」 「悪趣味ですよ先輩」  さすがアニキの後輩……これだと、この中で一番マトモな人間は俺だけだとおもってもいいよな?  また、ため息が溢れ、あーちゃんとアニキの言い合いを傍観していた俺は、視線が合わさったアニキに、腹が減ったと台所へと連れて行かれた。 ✱✱✱  アニキが電気をつけ、俺はと言うと母親が書き溜めたレシピが書いてあるノートを手にし、ページを捲った所で、アニキに座るように言われる。    もちろん、俺はノートを持ったまま、めんどくさそうに腰を落とす。   「腹減ってるんじゃないのかよ」 「減ってるとも、それよりも先に、これを謙吾くんに渡したくてさ」  気持ち悪いぐらいニコニコと笑う、アニキが目の前に置かれたのは、小さな白い箱。  箱の中身を聞いても、いいから開けての一点張りで、箱を手に角度を変えて見てみたけど、わからず、小さな箱をそっと開けてみた。  
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加