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* 動機はいつも浅はかなスタート *
***
『末端の親戚まで把握するのは難しい』
大学教授する者あり、地域に根差した商売する者あり、放浪の画家気取りの者あり……。伝え聞いていた通り、僕たちの親戚はとてもバラエティ溢れる才能の持ち主ばかりでした。
でも、そんなことで驚くほど、ミーハーではありません。だけど、似たような思考を持つ親戚の存在を知り、高揚しないはずがありません。
「あはは、君たちが兄弟で京大目指したアホの子かあ」
僕たちをアホの子というのは、理由があります。
ただただ兄弟で京大を目指したい。
それだけの理由で進路を決めたからに他なりません。
人によっては馬鹿げた理由でしょう。
アホくさい理由でしょう。
でも、だからこそ、兄弟で京大を目指す楽しさがあると思ったのです。
なんて、そんなことを他人に理解してほしいとは思っていません。
だけど、同じ理屈で必要な資格取得を奔走したと有名な彼女に馬鹿にされたくありません。
「せっかく姉妹に生まれたのだから店じまいを目指そうと言い出したアホの子にだけは言われたくないなあ」
そうです。
目の前の彼女はもっとアホの子です。
『しまい』が付く目的地が見つからないと言い、最終的に代々続く店の閉店を目標に置いたという規格外の人物です。
しかも、経営危機に陥っていなかったと知っているから驚きです。
だけど、彼女たちは間違いなく僕たちと同じ血筋が流れていると信じて疑うことはありません。
勤勉なことも良しとするが、何より人生は楽しんだもの勝ち。
そう考えているからこそ、彼女の発言に苦笑するしかなかったのです。
【Fin.】
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