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とても可愛らしい人だと思った。
お世辞にも整った顔とはいえないけれど、まん丸い顔に大きな目、小さく低い鼻に大きな口。長い黒髪が印象的な、兄さんの婚約者。
「大和くんよろしくね。」
そういって笑った顔が、とてもまぶしく感じた。
(これはまずい。)
兄弟だな、と動揺を悟られないよう兄さんの方に顔を向けると、兄さんはデレデレと婚約者の彼女を見ていた。兄さんの婚約者の木下千鶴さんは、早くにお父さんを亡くされ、お母さんと妹と三人で過ごしてきている。千鶴さんは家事をしながらバイトもして、かなり苦労をしてきているらしいが、その明るい笑顔からは想像もできない。
「大和くんは好きな食べ物はある?」
料理が得意という彼女は、アップルパイを作って持ってきていた。
「ん、まあラーメンかな」
「ラーメンかぁ、それはつくって持ってこれないなぁ」
眉を八の字にして考える姿がとても可愛く、見とれてしまっていると、
「他には?」
ぐいと顔を近づけてくる彼女。目をそらしながら、僕は言った。
「肉じゃがかな」
作って持ってこれるものを考えて答えてやった。そうすると、彼女はにっこりと笑った。
「肉じゃが、得意なんだ。今度もってくるから楽しみにしていてね」
こんなことを言われて落ちない男はいないんじゃないのか、そんなことを冷静に考えながらも、僕の耳は真っ赤になっていたと思う。
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