結婚相手

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その肉じゃがを食べることなく、次に会ったのは結婚式だった。とても綺麗な花嫁、僕のはかない恋は終わった。しかし、ここで僕は・・・。 後の奥さんと出会う。 失恋に落ち込む僕の気持ちを知ってか知らずか、兄さんは一人の女性の手を引いてきた。 「萌香ちゃん、俺の弟の大和。仲良くしてやってね」 花嫁、千鶴さんの妹。なるほど、確かに丸い顔はお姉さんに似ているが、少し切れ長の目やショートの髪の毛は僕の心に刺さらなかった。向こうはまんざらでもないのか、しきりに話しかけてきた。 「あの、あの・・・」 千鶴さんの妹の木下萌香さんは、僕より一個下、人見知りなのかおどおどとしながらも、趣味や休日の過ごし方など一生懸命に話しかける姿がいじらしい。その様子を隣で微笑みながら見ている着物の女性。女手一つで彼女たちを育てた母親が、 「この子、お姉ちゃんと違ってすごく人見知りで。でも、とってもいい子なのよ」 そういって萌香さんの頭をぽんぽんと撫でる。うっすらしわが見えるが、まだまだ若々しい母親、千鶴さんはお母さん似、萌香さんはお父さん似だろうか。ぼんやりとそんなことを考えている間にも、萌香さんは僕に何かを伝えようと小さな声を発していた。 「どこか食事に行くなら・・・。大和さんは、好きな食べ物は何かありますか?」 千鶴さんが初めて僕に聞いたこと。 「えぇっと・・・」 「うん・・・」 キラキラとした目で僕の答えを待つ萌香さん。そんな萌香さんに申し訳ないと思いながらも、僕の視線は別のところに釘付けになっていた。 兄弟って好みも似てくるものか・・・。
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