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姉は惚けたような口調でこう語った。
「君がそこまで私のことを想ってくれるだなんて、正直すごく嬉しかったんだよ。
だってさ、うちの学部って君の元々の成績だと絶対に入れる訳なかったんだから。
1年で偏差値を20も上げて合格できるだなんて奇跡もいいところだよ」
僕はただ、姉の傍に居たいだけだった。
それだけだった。
「私も君のこと好きだよ、ずっと。
でもね、もう色々と疲れちゃったの。
別に好きでも無い人に抱かれることも嫌になっちゃった。
君のことを忘れようとしても、君は私のことを諦めてくれないみたいだし。
そして、私もそんな君の行動がすごく嬉しいし。
もう、どうしようも無いよね、私達って」
僕は力なく頷く。
そう、どうしようも無いんだ。
姉は言葉を続ける。
「最後にさ、君とちゃんと恋人になりたいな。
好きな男の人に抱かれたら、一体どれほど幸せな気持ちになれるかちゃんと知りたいの」
僕もそのことを願い続けていた。
姉と只管に愛し合いたいと。
僕は頷く。
姉も頷き、そして言葉を続ける。
「そしてね、心行くまで愛し合ってから、私達は心中するの。
桜の花片で満たされた水面に二人して身を投げるの。
お互いの小指を赤い糸で結んで。
来世ではちゃんと普通の恋人同士として結ばれるようにと祈りながら」
僕の心の中に、桜の花片で覆い尽くされた水面へ手を取り合って入って行く僕と姉との姿が思い浮かぶ。
僕たちの身体は水面に沈んでから粉々に砕け散り、夥しい桜の花片となる。
そして、水面を覆う花筏となるのだ。
もう、それでいい。
僕はそう思った。
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