聖なる器と呼ばれる理由

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いつの間にか寝ていたようで、目を覚ました時は既に走る馬の上だった。日は高く俺はガレウスに擦り寄っていたが、ふと気付くと複数の馬の走る音が聞こえてきていた。 肩越しに後ろを見ると騎士達が追ってきていて、俺はガレウスにしがみつく。俺が起きたと気付けば更に馬の速度を上げてゆき、森を抜けて草原を駆けてゆく。 しばらく走らせていれば馬が嘶いて倒れてしまい、俺達は落馬してしまいあっという間に騎士達に囲まれていた。 馬には矢が刺さっていて血が流れていて、俺は馬の止血に入ろうと思ったが起き上がろうとしたガレウスを上から覆いかぶさり庇う。 「聖なる器様…大人しく城へ戻られるかここでガレウスを失うか選んでください」 金髪の騎士が馬を降りて跪いて俺の顎に指をかけて目を合わせてくる。俺が何か言う前にガレウスが俺を押し退けて素早く立ち上がり剣を抜いたが、次の瞬間口から血を流している。 心臓を矢が貫いていて、俺は口元を抑えながら思考回路が真っ白になってしまった。胸が握りつぶされるように苦しくて涙が止まらない。 金髪の青年が矢を放った騎士に何か言っているが、俺は倒れてしまったガレウスに慌てて駆け寄る。まだこれから色々な所連れて行ってくれるはずだったんじゃないのか? もっともっと一緒に居てくれるんじゃないのか?俺は咳き込んでしまい、咳が止まらなくてガレウスの目の前で倒れて意識を失ってしまった。
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