聖なる器と呼ばれる理由

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ハッと目を覚ますと夜の公園のベンチの上で、スーツを着ていた。起き上がって辺りを見れば遠くからこちらへ歩いてくる人影が見えるがよく見えない。 あぁそう言えば俺は鞄を取られてそれで…倒れていたはず。今までのあれは夢…にしては縁起悪い夢だったな… 片手で顔を覆って苦笑していれば足音が隣で止まり、手を退けてその姿を見て言葉に詰まる。 「ガレ…ウス…?」 「寝ぼけてんの?俺は天木直人だよ。そんな外人みたいな名前じゃねーよ」 黒髪黒目に右目に眼帯をしていたが、ガレウスよりたぶん若い…というか俺より若そう…パーカーとか着てるしスニーカーを履いている。 「助けてくれたのか…?」 「目の前で鞄取られてんの見たら助けるだろ?」 「助けられてばっかりだな…ごめん」 俺が苦笑していれば頬に触れて唇が重ねられ、俺は目を見開いて涙が零れ落ちる。 「なんでかわかんないけど…したくなった。あんたを守らなきゃって思って…」 「赤ちゃん産めないけど…俺と生きてくれる…?」 「当たり前…あぁ…あー…」 直人は何かを納得したように空を見上げてから俺を見つめる。 「それでも俺は種付けをしたい。なるほどモヤがかかった夢だと思ってたが…運命ってやつか」 その言葉を聞いて直人の首に手を回して引き寄せて唇を重ね、舌を絡めてゆく。抱きしめてくれて直人からも舌を絡めてくれて涙が止まらない。 どうやら直人は大学生で、卒業したら結婚式を挙げようと約束してくれた。その時が待ち遠しくてたまらなくて、楽しみにしていたが卒業式の日に俺は急な発作で倒れてしまい、今度こそ二度と目を開ける事が出来なかった…
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