雨の日

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「…そんなに親切だと、いつか悪い奴に騙されちゃうぞ」 「…かまわない。ところで傘は?」 「ない」 「では車からもう一つビニール傘を取って来るから、この傘を持って待っていて欲しい」 「それだと車まで行くのに、お前が濡れちゃうじゃん」 「いいから。濡れないようにしっかり持っていて」 傘を手渡される時、指先が触れた。 一瞬、男の指先がピクリと震えたような気がしたけど…ただの見間違えだろう。 アパートの周辺。 古本屋への道中。 本屋の中。 全てをくまなく探す。 本屋の店主にも聞いてみたが「そんなものはなかったよ」と言われてしまった。 ではあとはどこを探せばいいのか。 絶望に打ちひしがれていると「ポケットの中は?」と問われる。 そういえばまだ、ポケットの中は調べてなかった!
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