プロローグ─愛し子と呼ばれる前の話─

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問いたいのに、問いかけられない。 唇が悔しさに戦慄いて、言葉が出なかった。 「…どうして、こんなことをしたんだ」 冷たい声だった。 僕は何も悪くない。 そこで泣いてるそいつが、おばあ様からもらった大切なペンダントを奪おうとしたから、頬を叩いてやっただけなのに。 「聞こえないのか、のえる!」 聞えてる。でも、どうせ、おじい様は僕のいうことを聞いてくれやしないだろう。 いつもそうだった。おばあ様が死んで、日本からこんな異邦につれてこられて。 それから、ずっと、そう。 おじい様は僕の顔を見て、冷たい顔をするばかり。 もう、うんざりだ。
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