プロローグ─愛し子と呼ばれる前の話─

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黙ったままでいると、溜め息が降ってくる。 「どうしてお前は……そんなにもあの人に似てしまったんだ。忌々しい…」 あの人。おばあ様のことを言っているんだ。 皆が言う。僕はおばあ様にそっくりだと。 特にこの瞳の色が。 誰かが言った。まるで夏の海と新緑を見るようだ。と。 どんな宝石にも代えがたい。 この目は僕の誇りだ。 おばあ様に似ていることを、忌々しいの一言で蔑むおじい様が許せなかった。 「僕は何も悪くない!おばあ様に似て悪いところなんて1つもない!」 「のえる!」 いつもは俯いて何も言わない僕が、言い返したことにおじい様は驚いたみたいだった。 「そいつが、僕のペンダントを盗もうとしたんだ。僕は何も悪くない。絶対に謝ったりしないから!」 僕の気持ちを全部無視して、そいつばかり可愛がるおじい様なんか大嫌いだ!
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