最後に残されたものは…。

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 十和子のうちは、お世辞にも裕福とは言えなかった。 それは、父親が酒飲みで早くに身体を壊してあまり働けず、若くして亡くなってしまったからだった。 母親は勤勉で優しい人だったことは救いだったけれど、とにかく生活が楽ではないことは子ども心に感じていた。 十和子には5歳上に早紀子という姉がいた。 早紀子と十和子はあまり似ていなかった。 十和子はみんなに小さい頃から可愛い可愛いと言われていたが、早紀子は一度も言われた覚えがなかったのだ。 早紀子は高校も進学校に通っていたのだが、うちのことを考えると大学進学は断念しようと決めていた。 先生は奨学金制度もあるからと強く進学を勧めてくれたのだが、やはり地元の企業に就職する道を選んだ。
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