15人が本棚に入れています
本棚に追加
十和子のうちは、お世辞にも裕福とは言えなかった。
それは、父親が酒飲みで早くに身体を壊してあまり働けず、若くして亡くなってしまったからだった。
母親は勤勉で優しい人だったことは救いだったけれど、とにかく生活が楽ではないことは子ども心に感じていた。
十和子には5歳上に早紀子という姉がいた。
早紀子と十和子はあまり似ていなかった。
十和子はみんなに小さい頃から可愛い可愛いと言われていたが、早紀子は一度も言われた覚えがなかったのだ。
早紀子は高校も進学校に通っていたのだが、うちのことを考えると大学進学は断念しようと決めていた。
先生は奨学金制度もあるからと強く進学を勧めてくれたのだが、やはり地元の企業に就職する道を選んだ。
最初のコメントを投稿しよう!