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「苦手でまずいかぼちゃにお箸をつけて下さったんですね?嬉しいです」
「あー玉ねぎとベーコンだけ食うつもりが、かぼちゃがグニュっと付いてきた」
「ああ、それで仕方なく口へ?」
「そう…それがうまいと思ったからかぼちゃだけ食ってみたら、いけた」
「いけた、とは?」
「うまかった」
「やった…ありがとうございます。嬉しい」
こういう瞬間もとても嬉しいもので、やりがいを感じる瞬間でもある。
「…嬉しいのか?」
「はい、とても。かぼちゃは栄養価に優れた野菜ですけど、まずいと食べられないですよね?今日は食べて頂けて良かったです。画ビョウもありがとうございました。食堂もぜひまたご利用ください」
そう言って調理場の奥の小さな事務スペースへ戻る時には彼の名前も知らなかったのだけれど。それから毎日ではないけれど、その時間帯に彼に会うことが増えた。
「世界の料理ウィーク…これ自分で考えたのか?」
「はい。気になるメニューがあれば、ぜひどうぞ」
こういうイベントは前もって1週間分のメニューを張り出す。もちろん定番メニューもあるのだが
月曜日、ハラールマトンと白いんげん豆のトマト煮(トルコ)
火曜日、ティラミス(イタリア)(小鉢でご提供)
水曜日、たっぷり野菜のボルシチ(ロシア)(ライ麦パン付き)
木曜日、台湾ラーメン(台湾)
金曜日、ミートボール(スウェーデン)(リンゴンベリージャムとクリームソース添え)
私の書いた記事やお知らせを丁寧に読んでくれて、少しだけ話をする。半年ほどそれが続いたあと、真郷から会社の外で会いたいと誘われた。これが私と真郷が付き合い始めるきっかけだった。
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