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‘狭間さんのことでお話があります。お話がしたいのでお時間をください’
平日の夜のカフェが指定してあるメールは、湯川不動産の総務課の小嶋奈美恵という人からだった。このパソコンのメールアドレスは湯川不動産の社員さんからご意見を受けるために食堂で公開している。
ふぅ…このアドレス、想定外の使い方をされたな…小嶋さんは名前を聞いても顔を思い出せない人だからお話をしたことがない方だろうか?
真郷と別れてとか、そういうことなんだろうとおおよその予測はつく。仕事が出来て、見た目もとてもエレガントな彼がモテないはずがないのだから。でも別れるつもりはないとはっきりと伝えて、すぐに出張から帰る真郷にも報告しよう。
メールを無視して食堂で騒がれても困るので、指定された時間にカフェに行くが小嶋さんがわからない。くるりと店内を見渡すと
「雨宮さん、こちらです」
ベージュのベーシックなテーラードジャケットにネイビーパンツ姿の女性が腰を浮かして手を上げた。
「お呼び立てしてすみません。小嶋です」
「雨宮由奈です。失礼します」
お店に悪いので珈琲だけ注文して
「お話というのは?」
と聞いてみる。前置きはいらない。
「はい…狭間さんとお付き合いされてますよね?」
「はい」
「狭間さんのために別れて頂けませんか?」
別れて、というのは想定内だが
「…真郷のために?どういうことでしょうか?」
小嶋さんの言わんとすることが半分わからない。
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