喪心と消沈

1/11

6044人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ

喪心と消沈

「姉ちゃん、弁当ありがと。夜は和風コロッケ頼むよ~いってきます」 「自転車気をつけて。いってらっしゃい」 仕事がなく実家で暇な私は、高校3年生の弟と父のお弁当を含めた食事全般を作ることにした。 「由奈、私のお弁当が増えてもいい?」 「いいよ、お母さん。変わらないもの」 「330円で食べられるからと思っていたけど、ついでに作ってもらえるなら、その方がいいわ」 「私のいる間だけお弁当にすれば?お弁当箱ある?」 母は昼間ファミレスのパートに行っており、1000円以下のメニューが330円で食べられるからお弁当を持って行ってなかったのだが、自分で作らないなら作ってと思うのも当然だろう。 「私、スーパーに行きたいから車を使いたいの。だからお母さん、送って行くよ」 「そしたら迎えもいるよ?」 「うん、行くよ」 「うふっ、送迎付きでパートへご出勤だわ、私」 「小さな軽自動車だけどね。今日はお弁当ないけど、おにぎりだったら持っていけるよ?」 「ありがとう、お願いする」 洗濯物を干しに行った母のため、おにぎりを作る。真郷もこのおにぎり好きなんだよね…ちゃんと食べてるかな…そう思うだけで涙が溢れそうになり慌てて冷蔵庫に頭を入れた。 クリームチーズ入りのプロセスチーズ1個を出して6等分する‘これはクリチ入りが絶対に美味しいよな’お花見をしながら公園で真郷が言ったんだ…また、涙を飲み込み、ラップの上にご飯、かつお節、塩昆布、クリームチーズ3個をのせてラップのまま握り、最後に焼き海苔を巻く。これを2個作り今日は持って行ってもらう。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6044人が本棚に入れています
本棚に追加