喪心と消沈

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由奈が消えてから1週間、茫然自失、虚脱状態だった俺に1本の電話が入る。 ‘太陽フーズの南です。狭間さんに見て頂きたいものがあります’ 「すぐに伺います。由奈の手がかりになるものですか?」 ‘…手がかりと言えば手がかりですけど…とにかく電話ではちょっと…’ 言葉を濁した南社長にすぐに行くと伝えて部屋を飛び出す時には、由奈を捕まえた気持ちになり身体中に力がみなぎるのを感じる。大したもの食ってないのに…人の気持ちというのは大きな影響力があるんだな。 「ご連絡ありがとうございます、南社長。見せたいものとは?」 「これは会社の雨宮ちゃんのパソコンです。彼女が退職してから今までそのままでしたが、今日開けたんです。会社で必要なもの、メニューなどですが…それを整理してから初期化して今後他の誰かが使えるようにするために」 会社の持ち物だから当然のことだが 「そこに何か?」 「このメールが…日付は湯川不動産さんの食堂で異物混入騒動があった日の夕方です」 ‘どうぞ身の程をわきまえてください。今後あなたの会社に傷がつかないといいですね’ 「差出人の記名がありませんが、これは湯川不動産社内のアドレスですよね?」 「N.Kojima…小嶋?」 「ご存知ですか?気になってこのアドレスからのメールを探すとゴミ箱に2通ありました。こちらには小嶋奈美恵と記名があります…日付順にまず…これが1通目」 南社長は由奈が消えた手がかりを見つけたのか?
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