喪心と消沈

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‘狭間さんのことでお話があります。お話がしたいのでお時間をください’ 小嶋の名前と会う日時と場所が書いてあるメールを見て、自分のスマホでスケジュールを確認する。 「俺の出張中ですね…」 「そうですか…もう1通は10日後のこれです」 ‘狭間さんは専務のお嬢さんを選ばれたようですね。ご結婚されるとお嬢さんから伺いました。それなら私も納得出来ますし、狭間さんのことはきっぱり諦めます。雨宮さんにも私の話をご理解いただけたようでありがとうございました。才能ある方の可能性を潰さないでいられたことに安心いたしました’ 「なんだこれ…専務のお嬢さん?話をご理解?」 「狭間さんが専務のお嬢さんと結婚されるということは?」 「話したこともない相手ですね。あり得ない」 「小嶋さんという人にアプローチされていた?」 「一度誘われて断ったと思いますけど、アプローチというほどとも思えません」 「雨宮ちゃんと会ってどんな話をしたかは分かるはずもありませんけれど、この3通の順序と内容から想像できるのは…2通目のあとも雨宮ちゃんは狭間さんを信じて変わらない態度で付き合っていた。それに腹を立てた小嶋さんが異物混入という嫌がらせをした」 「そしてさらに会社に迷惑がかかるぞ、と3通目で脅した…消えろと言われたか…由奈…」 「ここまでやるんですから…雨宮ちゃん…かなり抵抗したのかもしれませんね、狭間さんを信じて」 「チッ…小嶋にも…気づけなかった自分にも怒りが湧く…由奈は我慢強いが強くはない」 「でも最大限の強さを絞り出して一人で対峙したのだと…想像ですが」 「このパソコン、このままお借りしてもいいですか?コピーしても何らか言い逃れされては困るんで」 「はい。個人情報に繋がるようなものはもう一切入っていませんから…どうされます?」
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