喪心と消沈

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専務室へ行くと到着したばかりの様子の牧野先生が上着を脱いでいるところだった。専務と同い年くらいか?という先生に 「急にすみません」 「湯川専務に連絡をもらって出先から移動してきたから、ここの資料はパソコンに入っているデータしかないですよ?」 「今日は業務の相談やトラブルではないんです」 そう言いながら由奈のパソコンを立ち上げる。 「専務、牧野先生。俺の個人的なことで終わらないから順に聞いて欲しい」 「珍しいというか、初めてだな…狭間くんがプライベートな相談をしてくれるのは」 「専務。専務と娘さんの名前も使われている問題です。結果的に他社へ損害も負わせている」 「狭間さん、分かりました。君のプライベートなことから会社に関する問題が起こっているという相談だね?」 「問題どころか…由奈は消えたんだ…どこかへ一人で行ってしまって…俺の前から消えた」 「他社への損害と由奈さんは狭間さんの大切な人?」 「はい」 「他社への損害と由奈さんが失跡したことで弁護士の私も呼ばれたと」 「そうです」 「では、順序だてて丁寧に教えてください」 俺はまず、太陽フーズの湯川不動産本社食堂担当者、雨宮由奈と付き合っていることから連絡が取れなくなったこと、部屋からも出て行って消息が掴めないことまで話す。それから南社長に預かったプラスチック片とメールを見せて、食堂利用者が減ったという実害とメールから推測できることを二人に話した。 「そういえば…小嶋くんと雨宮さんが二人で話しているのを見たことがあるよ」 「専務、それはいつでしたか?」
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