喪心と消沈

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「専務。俺、山梨の用地、バンバン取って来ます」 「山梨の用地?山梨県に雨宮さんがいるのか?」 「実家が山梨ということしか知らないんですが、あんなに短期間で部屋を出たとなると実家にいると考えるのが妥当かと」 「仕事も辞めているとなると第一候補だね。仕事をしながら自分で探すつもりということか…」 「はい」 「それならすぐに山梨泊の出張にしてしまえばいい。その間に小嶋くんのことを進める」 「そうですね。狭間さんが東京にいないという方が徹底して会社対応だと伝えられる。聞き取りから始めて数週間はかかりますよ」 「山梨を拠点に、静岡にも顔出ししたいオッサンのところがありますから、仕事しながら由奈を探します」 「富士山を眺めながら無理なく余裕を持って動くんだよ、狭間くん」 「無理はします。俺の人生で…今無理しなくていつするんですか?」 そう言った俺を見て、湯川専務は分かりやすくため息をつき、牧野先生は 「いい報告を待っています。気をつけて…今日出ますか?」 と確認してくる。 「一度帰って、すぐに出ます。今夜から山梨泊にします」 「では、明日の午後聞き取りをします。彼女達の会話まで出来るだけ聞き取りをして、狭間さんへ報告します」 「そこまで聞き取り可能ですか?」 「そこはね…正直に隠すことなく全て話した方が有利になると思わせるわけです」 「尋問のプロってところですか?」 「…気分よく話して頂けるように仕向けるだけです」 「報告、待っています。由奈の気持ちを理解して受け止めて、それから癒してやりたいので…よろしくお願いします」
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