喪心と消沈

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富士山の見えるビジネスホテルを1ヶ月予約してレンタカーを借りる。地方での地主回りに車は欠かせない。 俺が調べたところ‘雨宮’という姓は山梨県で10位の人数がいるという。ベスト10に入るのかよ…結構多いってことだな。とりあえず地主のところで土地の話と‘雨宮’の話を聞いて回ることになるが、いろんな市町村を回りたい。 由奈に会ったときに、俺の仕事の業績が落ちていては由奈が自分のせいだと思うだろう。業績の詳細など知らなくてもいいが、うまくいっていると伝えたい。俺が由奈に、大きい仕事が決まったと報告すると、由奈は自分のことのように喜んで 「週末何食べたい?真郷リクエストディナーにしようね」 と必ず言うんだ。会いたい…会って抱きしめたい。抱きしめて、気持ちを吐き出させてやりたい。 翌日の夜、牧野先生から電話があり、小嶋と由奈の会話の詳細を知った。馬鹿げた言いがかりとしか言い様のない小嶋の言葉の数々に怒りと憤りを感じるが、由奈が俺を信じると言っていたことに喜びと幸福を感じる。 ‘昨日も言いましたが、最後まで信じていなかったのかなんて由奈さんを責めてはいけない。彼女は凛として狭間さんを信じると言い続けて、思い続けていた…小嶋さんを煽るほどね。きっと最後も君を信じる気持ちは揺らいでいないと思います’ 「はい」 ‘明後日、太陽フーズの社長とお会いすることになりました’ 「俺は今聞かせてもらったことで十分です。無事懲戒解雇になったときに教えてください。由奈をそこに連れて帰りますから」 そう言ったが、1ヶ月で由奈を見つけることは出来なかった。
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