再会と躊躇

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再会と躊躇

1ヶ月間、牧野先生からは連絡がなかったが、2週間ほどの頃、真っ昼間に植田から電話があった。 ‘湯川専務とうちの顧問弁護士の牧野先生が、小嶋のデスクまで来てペンやらを調べるようにしたあと、小嶋が連れて行かれたらしい。で、なんで狭間に電話しているのかっていうとな、小嶋のデスクの両隣の奴らが言ってたんだよ‘水色のプラスチックの欠片が入ったものを手に牧野先生がデスクを探ってた’‘混入とか言ってたから、2ヶ月ぐらい前にあった異物混入の捜査か?’ってな。由奈ちゃんに関係あることだから電話したんだ’ 「そうなのか…ありがとう、植田。また何かあったら教えてくれ」 俺は何も知らないフリでそう答えておく。専務と先生に言われた通り…由奈のためだ。俺は何も知らない…由奈を追い詰めた小嶋を罵ることさえ出来ないのは悔しすぎて辛いが、由奈の辛さを思えば微々たるものだ。 しかし由奈を見つけることは出来ないまま、一旦ホテルをチェックアウトし、1週間後からまた1ヶ月の予約を入れて東京へ戻った。 東京での1週間、1ヶ月分の出張精算書を作成したり、出張中に買い取った用地の出口を探って情報収集したり、東京郊外のいくつかの地主を訪ねたり仕事が山積みだ。 「久しぶり…って…狭間、食ってる?痩せただろ?」 「植田、何度か電話ありがとうな」 「それはいいが、食ってる?一緒に食堂へ行こうと思って来たら…お前、痩せててビックリなんだけど?」 「精悍な顔つきになったと湯川専務に言われたが?」 「精悍過ぎて鋭い感じがヤバいって。狭間は優雅なイケメンだって騒がれてたのに…とにかく飯。奢る」
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