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注文した日替わり定食のメインはアジのフライだった。そして、かぼちゃのサラダが乗っているのを見て‘この2ヶ月以上、かぼちゃ食ってないな’と思う。由奈が栄養価が高いと言っていたものだから食わないと…まずっ…
「狭間、かぼちゃ嫌いだったか?」
最初の一口以降、俺がかぼちゃサラダを避けていることに気づいたのだろう。もう少しで食べ終わるという時に植田が聞いてくる。
「由奈のはいける」
「このサラダ、うまかったけど?」
「やる」
「何が無理なんだろうな…」
植田が俺のサラダに手を伸ばしながら不思議そうに言った。
「由奈のかぼちゃサラダはもっとしっとりしてる。これは無理」
「狭間、そうして…由奈ちゃんの以外食えずに痩せたのか?」
「いや、まさか…見ろよ、全部食ったぞ。ごちそうさま、植田」
「ハードワークなだけか…?」
食ってることは食ってる。ただ何一つ栄養になる気がしないのは精神的なものだろう。
「一昨日かのメール見たか?食堂の入口にも張り出してあったが…」
「見た」
「あれがショックだったせいだとしたら…由奈ちゃんが可哀想すぎるな。狭間も…」
一昨日、会社から本社勤務社員宛にメールが届いた。そこには、2ヶ月前の食堂での異物混入事件が当社社員による故意の偽装であり、該当社員が太陽フーズより民事訴訟を起こされている現状報告。そして、太陽フーズに一切の落ち度のあることではないので、安心して積極的な食堂利用を…と書かれていた。
おかげで賑わう食堂だが、ここに由奈はいない。
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