再会と躊躇

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俺が再び山梨県へ入って数日後、小嶋の懲戒解雇が発表された。だが、俺にとってはもうどうでもいいことになっていた。自分が手も口も出せないことに気を取られている暇も余裕もない。ただ 「由奈、安心して戻ってこいよ」 スマホの中で満面の笑みを見せながらソフトクリームを頬張る由奈に言う。出掛けた先々でソフトクリームを楽しむんだろうが…次の行き先はどこにすんだよ。早くしないと寒くなっちまう。 それから由奈の誕生日の10月28日までには見つけると思い、プレゼントを準備して探すも見つけられず、クリスマスプレゼントを準備して探すも見つけられなかった。 やっぱり市街地にいるか…由奈の仕事を考えてもそうだろう。これまでにも、もちろん市街地の‘雨宮’をあたってはいるがまだ由奈にたどり着けない。 「狭間くん、プロを雇うか?3日で見つけるとか聞くが?」 東京と山梨を行き来して4ヶ月、由奈がいなくなって5ヶ月経った3月初めに湯川専務が俺に言う。 「それ…考えてはいたんですけど、ああいう会社が数えきれない枚数のチラシを撒いてローラー作戦なんてするのは、由奈を晒し者にするようで嫌なんです。由奈の家族にも悪いと思うので…でも…そうですね、今月中に見つけられなければそうします」 もちろん俺もプロについて調べた。3日で見つけるというのはローラー作戦が多いので俺は拒否する。となると、プロは有料の会員制データベースを利用して人探し対象者を探したり、電話帳や住宅地図などのオープンソースを利用した調査を行うらしいが、それなら俺がやっていることと似ている。もう少しだけ…俺が由奈を見つけて迎えに行ってやりたい。
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