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店員に感謝しながら車に戻った俺は割り箸の袋を見て、ふっと自分の頬が緩んだのがわかる。
「感謝するが…ふっ…ここを見ればわかるだけのことで、何一つ情報は漏らしてねぇな」
と店員に感心する。彼女は由奈がいるともいないとも言わなかった。伝言も出来ないと言った。でも俺が勝手にいると確信を持っただけ。
箸袋を見ながら弁当を食う。卵焼き以外は誰が作ったかなんてわからない。それでも、由奈のレシピでなくたってここで由奈も働いていると俺にはわかる。この米を炊いたかもしれないな。何より、働いているというのは元気でいるということだ。
いろんな種類の嬉しさに時々味がわからなくなりそうなくらいだが、菜の花のからし和えに季節を感じ、もう春だ…と会えない時間の長さを思うと、菜の花が苦く感じる。でも
「菜の花は由奈が好きな食材だ…うまい」
呟きながら‘西の丘弁当’の住所を2ヶ所見比べ、下の方が今の店舗だと見当をつける。よく考えれば、今の店舗には厨房はなかった。販売のため間借りしている店舗なのだろう。
そして‘西の丘弁当’の上に‘西の丘食堂’と書かれているので、最後に卵焼きを口に入れた俺は、その食堂を検索してみる。
宣伝効果のなさそうな…やる気のなさそうなページだが、この西の丘食堂が本店で弁当屋は2ヵ所とも昼の販売のみしているようだ。食堂の営業時間は11時30分から14時、17時から20時。食堂はこの市街地の西の端…マジか…俺、この食堂から数キロの市街地の外れを年末に買い取ったからすぐそこまで来ていたんだ。
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