序章

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「辞めてる?」 ‘辞めてる’ 「いつ?」 ‘日にちまでは覚えてないが…’ 由奈は栄養士で調理師ではないので、会社まで来ない日もあるから日にちまではわからないのだろう。 ‘もう3週間くらいじゃないか?’ 「はっ?俺がこっちに来てすぐ?」 ‘いや、狭間の出張も俺ははっきり把握してないからすぐかはわからないが’ 「でもそれくらいに感じるほど前に辞めた?」 ‘なんか…異物混入騒動があったらしくて責任取って辞めたんじゃないかって聞いたけど、うちの会社のことではないからはっきりとは知らない’ 「異物混入?そんなことあったとしても調理師や調理員の責任だろうが」 ‘俺に言うなよ。由奈ちゃんの会社のやり方なんじゃないのか’ 「…くっそっ…由奈は何も言わなかった…」 ‘狭間、いつこっちに戻るんだ?’ 「1週間後の予定だったが明日戻る」 ‘なんか…訳あり?狭間に何も言っていないなんて’ 「無駄な我慢強さを発揮しているだけならいいが…離れている間に大問題が起こっていたとは…何日も気付いてやれなかった…情けねぇ…くっそっ…」 ‘電話だけじゃ難しいだろ…ただでさえセクシーな声を、泣いてもっとセクシーな鼻声にしてるかもな’ 「…植田…想像するなよ」 ‘こんな時間に想像したらヤバいよな’ 「何時でも想像するな」 ‘由奈ちゃんのことで電話してきたのはお前’ 「…そうだな。遅くにすまなかった」 3週間前に異物混入から退社?で、今は連絡が取れない?とにかく、明日訪問の約束をしている地主には会ってから東京に戻り、由奈の部屋に直行する。
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