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「だけど、彼女は自分の担当しているところで起こったことだから、と…辞めると言ってきたんです。もちろんそんな必要はないと引き留めました」
南社長からも苦悩が見える。
「でも辞めると引き下がらない雨宮ちゃんに、担当会社の交代をすることで会社に残ってくれるように頼んだんです。彼女は週末に考えさせてもらうと答えて…月曜日には体調不良だと欠勤して火曜日には…」
言葉を区切った南社長が俺を見る瞳を大きく揺らした。
「由奈が火曜日に?…」
「退職届を持って来ました…やっぱりここにはいられない、と言って」
「どうして…」
俺は背もたれに体を預け天を仰ぐ…生涯現役を目標にしていた由奈が?
「…一体…何が起こってるんだ…?」
「僕もおかしいと思ったんです。異物混入騒動くらい…くらいと言ってはいけないのですが彼女に責任のないことで‘ここにはいられない’なんて。ここの誰も雨宮ちゃんを責めてはいない。でも彼女は何も話してくれなかった。僕は、どんな形でもここに雨宮ちゃんの仕事はあると最後に念押しすることしか出来なかった…もしここが嫌でも、専門学校卒業生の伝はいくらでもあるからいつでも僕に相談してと何度も言って見送ることしか出来なかった」
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