喪失と消失

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私が栄養士として担当するのは‘湯川不動産’本社の社員食堂だ。 メニュー作成やイベント立案などの事務作業から、食材発注やサンプルの確認、試食、サイネージ(電子看板)用の写真撮影。営業中にはホールに出て補充、追加対応もするし、担当の湯川不動産の調理場はもちろん、人が足りていない他企業への調理サポートへ出向く時もある。 ホールにいる間にはお客様…湯川不動産の社員さんのお声を積極的に聞いて、何が美味しかったか、美味しくなかったかを教えてもらう。 社員食堂は人それぞれニーズが違うので、その多様なニーズを把握したうえで、どれだけ美味しいものが提供できるかが大切だ。それを達成できないと、社員さんにまた来てもらえなくなってしまうので私はこの食堂のコンセプトを‘家族と食べたい料理’として、日々奮闘中だ。 お客様だけでなく、調理師さんから厳しい声をもらうこともあるけど、それも改善しつつ協力して営業している。 「ねばねば五目丼、恐る恐る食べたけど美味しかったわ」 そう言ってもらった翌日には、食堂入口のボードに写真と共にレシピを張り出す。 長いもは角切り、塩ゆでオクラは小口切り、梅干しはこまかくたたき、粉末かつおだしと納豆、納豆のたれとすりごまを混ぜ合わせ、丼に入れたご飯に乗せて最後に青じそをトッピングする…こうして、レシピを公開したり、季節ごとのオススメ食材の豆知識などを伝えるためのボードは皆さんにとても好評だ。
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