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記憶喪失の騒動から年月が経ち、佐伯 涼は高校生になっていた。南高校に通う2年生である。 本人は、記憶喪失になった記憶は、殆どと言うより全く無い。本人にしてみれば、殆どの記憶は戻ってるので、自分が記憶喪失になっていた感覚が無いのだ。 幼稚園の頃の記憶も今では、曖昧にしか覚えてない。でもこれは、一般的に考えて、周りの人も同じ事だろう。なので幼稚園の時に記憶喪失になった事など、今となっては、無かった事と同じなのであろう。 2年生になって新学期が始まり、一週間が経った頃、高校からの帰宅途中、自宅の最寄り駅で女の子から声を掛けられた。 「あの、涼くんだよね?」声の主は、初めて会う顔だった。西高校の制服だから、同じ歳位なのだろう。 「突然ごめんね。覚えてないかなぁ?私、神楽 舞。幼稚園の時に一緒だった!」幼稚園?全く記憶に無い。 「悪いけど、覚えてないや。それに、幼稚園の頃なんて今となっちゃ、殆ど記憶に無いし。君だけじゃなく、先生だって覚えてないよ」 「そうだよね。そんな小さかった頃の事なんて覚えてないよね普通。でも私は覚えてて、そのなんて言うか…」
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