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月下
夜半になって、シウは客室を抜け出た。約束していたわけではなかったが、裏玄関の扉を開けると、サイリが待ち構えていた。暗がりで彼の表情はよく判らなくとも、不服そうな面持ちであることは察しがついた。
「朝になるかと思ったじゃないか」
サイリは組んでいた腕を解き、シウの肩に回した。シャワーを浴びた後の、仄かに甘い香りが鼻腔を刺激する。
シウは酔い潰れた父親から逃れるだけで、石鹸の匂いが薄れるほど既に汗だくだった。ジンは酔った勢いで息子をベッドに引きずり込もうとした挙げ句、シウの手首を掴んだまま寝ついてしまったのだ。シウは蒼白い光に、自身の手首を晒す。
「さっきまで掴まれてたんだ。指の痕がついてるだろう」
「単に強く握られただけなら、すぐに失せるさ。……俺たちと違って、消えない痕ってわけじゃないし」
「サイリは何か、……痕が残ってるのか?」
「どうだっていいだろ。それで俺の価値が変わるわけじゃあるまいし」
西の階段を使って道路に出ようとすると、ペンションの経営者である双子がサイリの兄を挟み、通りを塞いでいた。ノアの背後にはレイがおり、項を吸っている最中だった。さらにノアはセトの耳朶の裏を、セトはノアの腕を舐め合っている。
「もうすっかり気を許しているじゃないか。あの腕の痕に触れさせるなんて、滅多にしないくせに」
サイリは呆れた口調で兄を見遣る。月下に見るノアの腕は、雷鳴が走ったかのような青黒い筋に覆われていた。黒いローブを纏う理由はそのせいか。
ふと弟の存在に気づいたノアが、徐に視線を向けてくる。彼は顎で、二人の少年を近くに呼び寄せた。加われ、という意味だ。
サイリは階段に跪き、ローブの裾を左右にはだけた。そして、何の抵抗もなく兄の下腹部に顔を埋める。その間シウは傍らに佇んで眺めていたが、途中でサイリと交代し、ぬめったそれを含んだ。
ほどなくして、喉の奥が熱くなる。呑みきれずに離れようとすると、頭を押さえつけられた。シウがえずくと、優しい手つきで髪を撫でてくる。一度では物足りないらしい。
再び奉仕を始めると、後ろから手が伸びてシウの膨らみを直に捕らえた。しなやかな指で幾度となく圧をかけられる。終いには腰を震わせ、思いきり掌に欲を吐き出してしまった。シウがノアの白濁を受け取った後で振り返ると、サイリは掌を丹念に舐めていた。
「……さ、もう行こうぜ」
力の抜けたシウを立たせたサイリは、先に階段を下ってゆく。ノアも少年たちにはそれ以上は求めず、セトに股がり口内を遊びだした。レイはローブの中に潜り込んで何やらしている。夜が明けるまで三人で過ごす気のようだ。
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