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 ほとんど寝ずに朝を迎えたシウは、眠気覚ましにシャワーを浴びてからダイニングへ向かうことにした。あれだけ酔っていたジンは既にベッドにはおらず、煙草を吸いに外にでも行ったのだろうと思われた。  部屋を出ると、二号室の宿泊客と廊下で出会した。双子ではない他人のはずなのに、同じストレートボブヘアとワンピースを着ていて全く区別がつかない。セトやレイは見分けられるのに、実に不思議だ。シウはメイヤの両親と軽く挨拶をした。言葉を交わすのは初めてだ。 「おはようございます……」 「おはようございます。今日も良いお天気ですわね」 「メイヤが度々ご迷惑をおかけしてるみたいで、すみません」  厳密に言えば、下着に限っては異なるデザインだった。メイヤは両親と手を繋いだまま、ニンマリと笑う。瞳は澄んでいて、邪気を感じさせない。 「今日はビーチじゃなくて、街中へ行くんだよ」 「いっぱい楽しんできな」 「兄さんたちは、夜中に遊んで楽しかった?」  無邪気すぎるゆえに、なかなか強かな少年だ。彼女等の後方で、別室のドアがガチャリと開く。五号室からノアが出てきて、独り階段を下りていった。サイリの姿はない。 「じゃあ、またね」  メイヤも母親たちと共に一階へ姿を消す。シウは階段を下りる手前で立ち止まり、五号室に耳を当てた。サイリは部屋で眠っているのだろうか。だが、ジンのように寝息が漏れ聞こえてくるわけもないため、実際には判らない。昨夜は夢中になって遊びすぎ、シウもさすがに草臥れてしまった。  ロビーに着くと、ノアとメイヤが立ち話をしていた。意外な組み合わせだ。メイヤはローブに興味深く触れ、不意に訊ねる。ノアは淡々としてクールな青年だが、やや歳の離れた弟を持つせいか、小さな少年でも邪険に扱うことなく質問に答えていた。 「ねえ、服の下どうなってるの?」 「別に。普通の人と変わらないよ」 「昨日の夜、トイレに行こうとしたら母さんたちがいなくて外に出たんだ。そしたら、厨房の兄さんたちが、この中で何か食べてるのを見たんだ」 「君にはまだ早いよ」 「食べないから、覗いていい?」 「お好きにどうぞ」  メイヤはローブに潜り込む。もぞもぞと中で動いてから、目を丸くして飛び出してきた。至極真っ当な反応だろう。 「わお……」  ダイニングに走ってゆく小柄な背中を見送った後で、ノアは紫黒色の瞳をシウに傾けた。気持ちを見透かされているようだ。 「……サイリなら眠っているよ。よほど疲れているのか、揺すっても起きない。昼頃にはいい加減、目を覚ますさ」
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