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ハッピー・エンドロール
「おーいレイ。講義始まっちまうぞ!」
桜散り咲く春の朝。隣の部屋のインターホンを押しながら、コウは大声で叫んでいた。
それもこれも、その寝汚さには瞠目するほどの親友のせいである。ガチャと開けられる扉の向こうからは、大きなあくびするレイの姿。
「静かにしてよコウ。まだ僕眠いんだから……」
「はいはいわかったから。行くぞ」
あの卒業式から二週間程。レイが生きていると安堵すると共に、コウは大学入学に向けた準備でかけずり回っていた。というのも、あれ程までに追い詰めた罪滅ぼしとして、レイのお願いを叶えるためである。
『大学が同じなんだから、寮かシェアハウスで一緒に過ごしたい』
それがこの親友の――大親友の、可愛い願いならば。
「レイ?」
今は、まだ。その関係にそれ以上の特別な名前をつける気はないけれど。
「手、握ってよ」
「……駅までだぞ」
「ん」
ほんの少しだが我儘を言うようになったレイの手を握って。コウは心からの笑みを溢したのだった。
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