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「レイ!!」
「……コウ、なんで」
静かに、息を潜めて追跡に追跡を重ね。レイが向かった先は、普段入れないはずの屋上だった。
「お前が急に居なくなるから追ってきたんだよ」
そうためらいなく告げるコウに、嬉しそうな悲しそうな表情を見せるレイ。
「こーゆーときだけ、優しいの。ズルいよ」
独り言ちるように零された言葉は、風にさらわれてコウの耳に響く。その瞬間、レイの身体にばぁっと現れる、蠢く入れ墨。
「な、んだよ、それ」
額に首筋から頬、手の甲。見える肌色の部分全てに痛々しさを感じさせる謎の模様が顕になっていた。
「“身代わり印”……僕を蝕む呪いだよ」
(そういう、事か)
母から聞いたのは、ずっと前の夏祭りの話だ。逸れてしまったコウを見つけ出した母が何をしていたのか尋ねると、彼は神社の中で子どもの遊んでいたんだと言う。
そして閉じ込められていたその子を、外に出してあげたんだ、とも。
『子どもの戯言だと思っていたけど、案外本当なのかもしれないね』
「異能力・呪い受け。これは肩代わりしてる呪詛のカタチ」
「……でも、俺ならそれを取り除けるんじゃないか?」
今ならハッキリ、思い出せる。
遊んでいる中、転びかけたレイをコウ受け止めたその時。小さな体に刻まれた夥しい入れ墨がフッと消えた様を。
「さあ、どうだろね。……そんなの、僕にはわからな――」
「俺は!!」
自傷するように言葉を紡ぐのを遮り、コウが声を張り上げる。
「お前が死ぬ未来を変えるために、チャンスを貰ったんだ」
脂汗を流しながらも立ち続けるレイに、一歩ずつ近づいていく。
『——ねえ、運命って信じる?』
「レイ。俺は運命を信じる」
「どう、いう」
コウが初めて遭った運命とも呼べるチャンスがこの時間跳躍だった。それまでは何も感じていなかったけれど、今なら。コウは手を差しだす。
「お前も! 俺を運命と思うなら、信じろ」
「……コウ」
レイの伸ばした手の指先が、コウの手に触れて。瞬間、掴んで引き寄せ抱きしめる。
助けたい、と願う。途端に薄れ解ける入れ墨、消えていく禍々しさ。
言うなれば、これは異能力・呪詛払い。
「ずっと、気づいてやれなくてすまん」
「……ん。許す」
耳元で謝るコウに抱きしめられていただけのレイか、柔らかに、穏やかに抱擁を返す。
「運命を信じるって、言ってくれたから」
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