5人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「初めまして。壱外くん、でいいのかな?」
始まりは入学式。教室で後ろの席にいたユウタの一言から、コウとレイの友情は始まる。
「そ、珍しいだろ。壱外コウだ、そっちは」
「僕は、糸衣レイ。よろしくね」
「よろしく。てか糸衣って……お前もめっちゃ珍しくね?」
壱外と糸衣。ちょうど前後の席となった二人は、不思議と気が合い入学式当日から意気投合した。部活動が違えど、二年生になってクラスが離れていても仲良く。今では親友と、もしくは大親友と豪語してもいい関係であったと、コウは自負していた。
自負していた、のに。
(レイが、死んだ?)
その事実が、走馬灯のようにコウにレイとの日々を思い出させる。
「——ねえ、運命って信じる?」
そして突如として脳内にこだましたのは、レイの唐突な問いかけ。三年生、部活引退後の放課後の教室で、それにどう答えたかと記憶を探れば。
「さあ、どうだろ。運命に遭ったことねーからわかんねえな」
「ふうん、そっか。コウらしいね」
その返答にレイは少しだけ笑って、窓の外を見た。
「そういうお前はどーなの?」
「そう、だなあ——」
即答したコウとは対照的に、逡巡する様子を見せた後。レイはコウを振り返って口を開く。
「信じたいとは、思っているかな」
(どうして、お前は、俺を置いて)
もう一緒に遊ぶことも、話すこともできない。その事実にコウの頭にズキン、と痛みが走る。息が吸えなくなるほどの苦しさに目を閉じれば、目尻から零れた涙が火照った頬を冷やし。
閃くように、海馬から記憶が引き出される。
「——ぁ、ぁあ、あ」
それは、まぎれもなく“俺”の中にある、“俺”の断片的な記憶。二人の強気な姉がいて、ゲームが好きで。押し付けられたゲームカセットをプレイする“俺”の経験が、“俺”の現実に共鳴する。
「そんな、まさか」
(俺の高校が、BLの、恋愛ゲームの舞台?)
零れた言葉は驚愕に満ち、そして気が付く。
「コウ、ぼーっとしてどうしたの?」
夕暮れの教室、机に座った状態のコウの目の前。——まだ生きているレイが不思議そうな顔で見つめていることに。
最初のコメントを投稿しよう!