バッド・エンドロール

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「初めまして。壱外くん、でいいのかな?」  始まりは入学式。教室で後ろの席にいたユウタの一言から、コウとレイの友情は始まる。 「そ、珍しいだろ。壱外コウだ、そっちは」 「僕は、糸衣レイ。よろしくね」 「よろしく。てか糸衣って……お前もめっちゃ珍しくね?」  壱外と糸衣。ちょうど前後の席となった二人は、不思議と気が合い入学式当日から意気投合した。部活動が違えど、二年生になってクラスが離れていても仲良く。今では親友と、もしくは大親友と豪語してもいい関係であったと、コウは自負していた。  自負していた、のに。 (レイが、死んだ?)  その事実が、走馬灯のようにコウにレイとの日々を思い出させる。 「——ねえ、運命って信じる?」  そして突如として脳内にこだましたのは、レイの唐突な問いかけ。三年生、部活引退後の放課後の教室で、それにどう答えたかと記憶を探れば。 「さあ、どうだろ。運命に遭ったことねーからわかんねえな」 「ふうん、そっか。コウらしいね」  その返答にレイは少しだけ笑って、窓の外を見た。 「そういうお前はどーなの?」 「そう、だなあ——」  即答したコウとは対照的に、逡巡する様子を見せた後。レイはコウを振り返って口を開く。 「信じたいとは、思っているかな」 (どうして、お前は、俺を置いて)  もう一緒に遊ぶことも、話すこともできない。その事実にコウの頭にズキン、と痛みが走る。息が吸えなくなるほどの苦しさに目を閉じれば、目尻から零れた涙が火照った頬を冷やし。  閃くように、海馬から記憶が引き出される。 「——ぁ、ぁあ、あ」  それは、まぎれもなく“(コウ)”の中にある、“(だれか)”の断片的な記憶。二人の強気な姉がいて、ゲームが好きで。押し付けられたゲームカセットをプレイする“(だれか)”の経験が、“(コウ)”の現実に共鳴する。 「そんな、まさか」 (俺の高校が、BLの、恋愛ゲームの舞台?)  零れた言葉は驚愕に満ち、そして気が付く。 「コウ、ぼーっとしてどうしたの?」  夕暮れの教室、机に座った状態のコウの目の前。——まだ生きているレイが不思議そうな顔で見つめていることに。
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