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一日目・放課後
「レイ……? だよな?!」
「えっ、なに? コウ、どうしたの急に」
鬼気迫るコウの表情に、ただただ困惑するようにレイは体を強張らせる。状況が呑み込めない彼の両肩を、コウは感情のままにがしっと掴み。
「だってお前、お前は!!」
実感を確かめるように、無意識にぐっとコウの手に無意識に力が入る。それにウッと小さく親友は呻いて。
「ちょっ、痛い」
「あ。すまん。……悪い」
慌てて肩を離す両手。それにちょっとだけ肩を回し動かすと、レイは元気づけるように笑みを浮かべて首を振る。
「いや、大丈夫。だけど本当にどうしたの? 顔色悪いよ……」
(それは、お前が)
心底心配そうな親友の表情に、思わず吐き出したそうになった言葉を飲み込む。そしてコウは両頬をパン、と思いっきり叩いた。
「コウ?!」
痛みはしっかり脳に伝わり、夢ではないことを実感する。そして尻ポケットから取り出したスマートフォンを日付を見れば、その日付は三日程巻き戻っている。
(タイムリープ……??)
「ねえ、ほんとどうしたの?」
「いや悪い、ちょっとした眠気覚ましだ」
物言いたげではあるものの、レイはそっと引き下がった。彼の遠慮深さが見え隠れするその様子に、コウはくしゃっと頭を撫でてやる。あまりにも慣れ親しんだその行為に、“俺”の感性が反発してかぁっと頬に朱が差す。
「コウ? やっぱり何か変じゃない?」
「いや、気にするな。大丈夫だから」
この距離感が普通だと感じる反面、男同士にしては近すぎると頭の片隅で鳴る警鐘。その相反する感情が、断片的に甦った記憶を正しいと感じさせられる。
「ほんとに? すぐ卒業式なんだし、風邪とかひかないでよ」
「わーってるって。ほら、帰ろうぜ」
そう告げてスクールバッグを担いだコウ。レイもスクールバッグに荷物は全部詰めてあるはずなのに、まったくと言っていいほど動き出さない。
「レイ?」
「ごめん。今日ちょっと用事があって、残らないとだから」
「……そか。じゃあまた明日な」
「ん。また明日」
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