二日目・昼休み

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二日目・昼休み

 キーンコーンカーンコーン、チャイムの音で昼休みが始まる。とたんに騒がしくなる教室内の片隅で、弁当を持ったコウはいつも通りに後ろへと椅子を半回転させていた。 「レイ、飯食おーぜ」 「ん」  一年生のときと同様、同じクラスになったコウとレイの邪魔をするものはおらず、変わらず出席番号が前後だった二人。昼ご飯を食う場所の準備が数秒で終わるのは、男子高校生にとっては大変有り難い日々である。 「……こうやってご飯食べるのも、今日で最後か」 「そだね」  コウにとっては、二回目の卒業式前日。それでも明日で卒業と思うと感傷とともに恐怖が襲ってくる。なにせ、まだ何も分かってはいないのだ。 「コウ?」  箸が進まない親友を不思議に思ったらしい、気が付けば怪訝そうにレイが見つめていた。慌てて箸先を卵焼きに向けるが、持ち上げるに至らず(ちから)なく箸を置く。 (一回目と同じ行動してたら、埒が明かねえ。だったら) 「あの、さ」 「なに?」 「明日、卒業式終わったら二人で集まらねえ?」  一回目の卒業式は、なんやかんやでクラス全体として動いた後に部活動やら委員会活動やら担任やらに捉まり、レイとはまともに話ができていなかった。昨日チヒロに言われて行動を思い出し整理したことで、コウは卒業式の異様さに気が付いたのである。 「ほら、一緒に写真とか取りたいし。どーかな」  一番の親友をほったらかして他のヤツらとばっかり話をするなんて、コウとしては考えられないことだった。でもそれは、一回目の卒業式でまかり通ってしまっていた。 「レイ?」 「あ、ああ……ごめん、ちょっと驚いて」  コウが名を呼べば、ハッとしたように焦点が合うその瞳。箸で摘まれたタコさんウインナーは、宙に浮いたままの所在なさげに彷徨い続けている。 「でも、」  それを一度お弁当箱の上へと位置を定めると、レイは。 「写真ならクラスでも取るだろうし。僕とわざわざ集まらなくてもいいんじゃないかな」  そうぴしゃりと、言い切ったのである。 「コウは友達、多いし。僕は、その後でいいから」 「そ、っか」  それは普段の遠慮深さが滲み出たのではなく、はっきりとした拒絶の言葉。 (やはり、卒業式でレイの身に起こる何かがある、ってことか) 「ほら、早く食べよ。今日はトランプとかテーブルゲームやろうって言ってたもんね」 「んだな! サクッと食って遊ぶか」  レイに努めてそう明るく返したコウだったが、その心内を満たす靄は暗く。未だ晴れの予報は出せそうになかった。
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