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「よう、昨日ぶりだな」
「……何の用ですか、先輩」
「お前に話を聞きたくてな。――東柳」
ホームルームが終わってすぐ。コウがその足で向かったのは、体育館。
自分自身が所属していたこともあり、難なく入り込めるその場所。コウが訪れたのは、ソウタがバスケ部だったことを思い出したからである。
「お、先輩ちーす。って東柳に何か用スか?」
顔見知りの二年生がコウに気がついたらしい。一年のソウタと並び立つ三年に不思議そうな顔をするものの。
「まあな、ちょっと借りていいか?」
「まダイジョブっしょ。どぞどそ」
二つ返事で貸し出してくれたのは、やはり先輩として仲を深めていたからだろう。外へとソウタを連れ出す。
「レイ先輩と仲が良かったのはチヒロなんで、オレはあんまり知りませんよ」
「だろうな。でもお前なら――お前の異能力を使えば、知る事ができる」
「ッ!!」
がっ、と胸倉を掴みあげるソウタ。それに動揺する様子を見せることなく、コウは続ける。
「他言はしないと誓う。代わりにチカラを貸してくれ」
寧ろその何故、どうして、と混乱の渦にある思考へと畳み掛けるように。
「親友の、生死に関わることなんだ」
「……何を、知りたいんですか」
心眼の異能力。それは自身の問いかけに対して相手が心に思い浮かべたことを、視覚的に知ることのできる異能。
「山南川がレイについて知っていることを」
真っ直ぐと目を見続けるコウに、はあ、と息を吐くソウタ。そしてゆっくりと掴んでいた胸の辺りの衣服を離すと。
「期待は、しないでください」
ただポツリとそう零した。そしてそのまま、体育館へと戻ろうとするソウタの背中を見送りながら。
「分かってる。ダメ元でも頼りたいんだよ……」
誰に向けるわけでもない言葉を、コウは一人呟いていた。
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